おじいちゃんに片思い
駅までの通り道にスポーツジムがある。
遠目からでも、2階のガラス張りのトレーニングルームがよく見える。
ある日、窓際のランニングマシンで走る、頭の薄いおじいちゃんが目に入った。
老いぼれてもなく、かといってお腹ぽっこりでもなくて、ちょっとだけ贅肉がある程度の、70代ぐらいの元気そうなおじいちゃん。
それから数日間が経って、はたと気付いた。
そのおじいちゃんは毎朝、自分が出勤するときに、必ず走っとる。
しかも、マシンは十数台あるのに、いつも決まったマシンで走っとる。
さすがに土日は知らんけど、平日は毎日、決まった時間に決まったマシンで走っとる。
一度気付いてしまったら、もうダメやわ・・・。
毎朝毎朝、出勤するときには必ず確認してしまう。
「 あのおじいちゃん、今日も走っとるやろか? 」
いつもの場所でいつもの姿を見て、なんだかホッとする。
ホッとする・・・て、おじいちゃんに失礼か。
もしかしたら、俺以外にも、毎朝そんなこと思っとる人がおるんかいな。
いまんとこ、おじいちゃんを見掛けんやった日はない。
毎日毎朝、元気に走っとる。
それが当たり前のように、おじいちゃんは毎朝そこにおる。
よしよし。
でも、そのうちいつか、走る姿が見えん日が来るよな。
たまたま別の用事があったんかもしれんし、その日だけ時間をずらしたんかもしれん。
ほいで翌日には、また走る姿を見て、なんだかホッとしたりするんやろな。
そして、その当たり前が、ホントに当たり前でなくなる日がいつかは必ず来るわけで。
走るおじいちゃんの姿がなくなるんかもしれん。
走るおじいちゃんを見る俺の姿がなくなるんかもしれん。
おじいちゃんの姿がなくなると俺はちょっと悲しくなるんやろか。
でも、俺の姿がなくなっても、おじいちゃんは、そんなこと知ったこっちゃないわな。
うん。でも、それでいいんだわさ。
なんでか、あの名曲を思い出したよ。
♪ LOVE LETTER / 槇原敬之
