はじめての東京

初めて東京に来たのは、小学6年の夏休みのこと。
それは、オトンとふたり、日本一周の旅の途中で。

それがまた、いま思えば、オトンには過酷な旅。
だって、、、、
移動手段は鈍行か急行のみ。
泊まりはすべて列車の中 (1泊のみ青函連絡船中泊)。
列車っちゅうても、寝台やなくて、普通のボックス席。
さらに、観光はほとんどなくて、ひたすら列車に乗りっぱなし。

まあ、俺が計画したんやけどさ、よく承諾したよな、オトン。
行程は・・・

福岡→広島→大阪→(車中泊)→金沢→新潟→秋田→青森→(船中泊)→函館→青森→仙台→(車中泊)→上野・・・

11歳の男の子なら、まだなんとかなるかもしれんけども。
オトンは当時、43歳。
おお、いまの俺とあんま変わらんやん。
子供のためとはいえ、えらいな、うちのオトン。

まあでも、旅行代金はそんなに掛からんやった記憶がある。
なぜなら、オトンは国鉄マンやったから。
当時の国鉄マンは、急行までなら全国どこでも無料で乗車可。

そんで、被扶養者である俺は半額で購入可。
俺は11歳やったけ、子供料金のさらに半額で切符が買えたわけで。

極めつけは、宿泊費はナシ。
1泊もナシ。
すげえな、オトン。

そんで、福岡を発って4日目の朝に到着した花の都、初めての東京。
そのまま早朝の新宿副都心に行って、超高層ビルを目の当たりにしたんやけど、それ以上に11歳の心に強烈な印象として残ったもんがある。

それは、新宿駅から副都心へ向かう地下通路でのこと。
まだ朝早いとあって、通路の端でホームレスが寝とった。

その横をオトンとふたりでテクテクと歩きながら、ちらちらとっと横目で見よったわけで。
ホームレスを見るのも初めてやったし。
当時はホームレスっちゅう言葉はまだ一般的やなくて、浮浪者って言いよったよな。

そしたら、その中の一人の股間から、なにかがニョキッと。
ズボンの開いたチャックから、まっすぐ上に向かってニョキッと。

立ち止まって確かめるわけにもいかず、一瞬しか見らんやったけど、あれは確かに朝勃ちしたチ●コでありました。
うん、すごい衝撃的やったな。

もうね、俺の初めての東京での一番の思い出は、これですよ。
初めて見る超高層ビルなんかよりも、初めて見た他人の勃起ですよ。
なんちゅうたって、いまでも覚えとるし。

結局そのあとは、台風が近づいて来とるっちゅうことで、午後の新幹線で帰福。
ちょうど山陰本線を縦走しよる頃に台風が直撃しそうとかで。

まあ、いま思うと「もう無理や」とオトンが白旗を上げたんやないかと思うけど。
でも、あの頃のオトンの歳になって思うのは、それでもオトンはすごかったなと。
俺にいま子供がおったとして、子供のそんな希望に応えられるやろか。

とまあ、そんな俺の初めての東京。
もう、31年前のこと。

そして今週の金曜の夕方に、甥っ子 (姉貴の長男) がうちにやってくる。
中学校の入学式直前に、3泊4日の初めての東京。
費用全部、俺持ち。

まあ、2年ぐらい前からの約束をようやく果たせるわけで。
これまで1〜2回しかお年玉をやる機会もなかったし、たまには叔父さんらしいことをしてあげようかと。

桜もちょうど満開になりそうで、でも俺は今年は御苑には行けそもないけど。
そのころ俺は、甥っ子と東京見物。
甥っ子は、どんな初めての東京の思い出を刻んでくれるのでありましょうか。

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