隣近所の人
3歳のときから暮らした市営団地から、いまの実家に引っ越したのは小学校3年のとき。
狭い2DKの市営団地から4DKの一戸建てになって、自分の部屋ができたのも、このとき。
こそっと飼っとったネコも堂々と飼えるようになったし、念願の犬も飼えるようになって。
まあ、ド田舎やから、当時でも千百万円ぐらいのお買い物やったんかな。
しかし、いまの自分の状況を考えると、オトンも立派やなあと。
まあ、そのあとオトンの勤め先の国鉄が民営化で揺れて、いろいろと家計は大変になってしまうんやけども、当時は新しい生活に家族みんなウキウキしとりましたな。
ただ問題は学校。
引越し先は同じ市内やったけども、隣の小学校のすぐ近くやったから本来なら転校するべきところ。
でもあえて転校はせずに、卒業するまで3年以上遠い道のりを歩いて元の小学校に通った。
通学時間は徒歩で45分くらい。
それまで喘息気味で身体も弱く学校をお休みすることも多かったけど、徒歩通学が長くなったおかげか、高学年になると休むことも減った。
学校からの帰り道、最初の15分くらいは友達と一緒やったけども、あとの30分はひとりぼっち。
しかも、隣の小学校の生徒が帰る方向とは逆方向に歩いて帰るわけで、なんだか毎日敵の陣地へ乗り込んでいくような感じ。
帰り道で前方から隣の小学校のヤツが見えてくると、ちょっと緊張。
お互い、道の反対側を逆方向に歩きながら、すれ違い際にはなんだか牽制しあったり、「 バ〜カ!」 とか言い合ったり。
なるべく隣の学校のやつに出会わんですむように、よく通学路は工夫してましたな。
そんな毎日が緊張の通学でも、たまに嬉しいことがあった。
うちの隣近所に暮らす人が車で通りすがりに、歩いて帰りよる自分を見つけると、車を止めて 「 乗せて帰ってあげるき、乗りなさい 」 と言ってくれる。
歩いて帰ると45分も掛かる道のりも、車なら10分もかからんで到着。
どっちがいいかと言えば誰がどう考えても、もちろん車。
となれば嬉々として乗せてもらうのがものの道理というもの。
親に 「 乗せてもらったらいけんよ 」 と言われることもなかったし。
逆に、 「 よかったねえ 」 て言われるくらいで。
時には、通いよった小学校の先生が乗せてくれることもあったねえ。
やから、家までトボトボとひとり帰りながら、
「 誰か通らんかなあ・・・ 」 といつも期待しながら歩きよったもの。
たまに、向こうが気付かずに通り過ぎてしまうことがあると、かなりショックで・・・。
いま、自分に子供がおったら、なんて言うんやろ。
と、百パー現実味のないことを考えてみる。
「 たとえよく知っとる人でも乗ったらいけんゾ 」 なのか?
そりゃ、知らん人に付いて行ったらいかんのは当然として。
でも、小さい頃に近所の人によくしてもらった経験がある自分としては、逆にそんな知り合いのコがおったら、乗せてあげたくなるやろな。
まあ、そんな子供のおる近所の知り合いも、東京に住んどるうちはできるわけないか。
てか、車持つ余裕もないし、いろんな意味でありえん状況やわな。
やっぱ隣近所の大人同士のコミュニケーション。
ほいで、その状況を子供にもよく知らせておくしかないんでないかと。
自分だって幼心に、 「 ああ、ここの人はあんまり近所から好かれとらんな 」 て親の話とか聞いとって思いよったもん。

