「 もう飼わんことにしたんよ 」

うちの実家には、猫がおる。
平日の23時過ぎ、久しぶりに実家のオカンから電話。
今年で、御歳67歳。
俺が煙たがるから、遠慮してあんま掛けてこんけど。
でも、切ったあといつも、「 もうちょい話しを聞いてやれば良かった 」 と思ってしまう。
今回も、いつものように取り留めもない話し。
孫 ( 姉貴の子 ) の運動会に弁当作って行くとかなんとか。
珍しく今日は辛抱強く聞いてあげられたかなと思いながら、「 そういえば、猫は元気? 」 と訊いてみた。
前回帰省したときも、ノートパソコンを触りよる俺の膝に、わざわざ上がり込んできてゴロンとなる。
寝るときも一緒布団にくるまって。
うちは、団地住まいやったころから動物がおった。
一軒家に越してからも、多いときには、犬×2匹、猫×5匹、金魚、鳥・・・なんかがおって。
20cmぐらいの蛇の子が居間をちょろちょろしとったときもあったっけ。
やから、物心ついたころから実家に動物がおらんやったことがない。
最近は、だいぶ前に犬が死んでしまって、猫が数匹おるくらいやったけど。
でも、何気なく訊いた 「 猫は元気? 」 の問いに、「 もうみんな死んだんよ 」 と答えが返ってきたときは、びっくり。
3年前に帰ったときは、2〜3匹おったんに。
考えてみりゃ、俺が大学生の頃くらいから飼っとった猫やから、そりゃもうそろそろ寿命を迎えてもおかしくはなかったわけで。
「 もう飼わんことにしたんよ 」 と続けてオカンは言う。
40年近くずっと犬や猫と共に暮らしてきたオカンが。
こんだ帰省しても、もう猫がおらんのは寂しい。
けど、もう飼わんと言うオカンの言葉にもっと寂しくなってしまった。
オフィスの窓から見える小さな裏庭から聞き慣れん猫の鳴き声がした。
顔を上げて外を覗いてみると、まだ生後1ヶ月くらいの子猫2匹と母猫の姿。
好奇心旺盛な子猫に付き合って、母猫も草むらではしゃいどる。
うちの実家には、むかし、猫がおった。

